信濃毎日新聞に連載 第2回 ケータイの落とし穴−いま子どもたちの世界は

信濃毎日新聞毎週月曜日に連載
第2回 ケータイの落とし穴−いま子どもたちの世界は

「大人が振り回される理由」
下田 博次    
 
 振り回される大人たち・・・・性別や年齢の壁 無効に
 昨年末に警察庁は,いわゆる出合い系サイトの利用を規制すると言い出した。そればかりではない。出合い系サイトに売春勧誘の書き込みをする少女にも罰則を科す考えを示した。これまで少女達は性的搾取の被害者とされてきたので、これは180度の転換だ。
 当然この警察庁の意向には「児童を罰するべきではない」という反対の声も出るなど、異論百出だ。私も求められて新聞に「ネットで援助交際を自ら求める少女には、罰則適用もやむおえない」というコメントを出した。但し「少女を罰する前に、まず少女を買う大人と子供の最終責任者である親の罪、責任をもっと重く問うべきだ」と述べた。少女売春が発覚したとき、少女達の親が「ウチの子は被害者だ」といってすませるのは道理が通らない。それにインターネットの中での付き合いでは、大人も子供も対等なのだ。実際に携帯電話を使った援助交際の実態からすれば、少女達はこのような情報環境に入り込んで、大人を主体的に振り回していると言ってよい状況が生まれている。
 ではどのように子供が大人をふりまわすのか。具体的にはサイトにアクセスした少女がこんな書き込みをする。「高校生です。Hしたいひといませんか」彼女達はこのメッセージに年令や場所、取り引き代金などのデータを添えて発信する。それを見て多数の成人男性から応募がある場合、少女は的を数人に絞り込む。相手が本当にお金持ちなのか、失業中の自棄になっている中年の男性なのかを見極めようとするのだ。そこで様々なキーワードを相手に投げてテストし、相手が安全で代金を支払ってくれるかどうかを判断するための情報を入手する。そのうえで実際に会うかどうかを決定するのだ。危ないと思ったら会わないし、現場まで行き待ち人を遠目に見て帰ることもある。単なるイタズラで済ますこともある。ときには少年が少女を装い誘い出し恐喝することもある。
 このようにして少女達は大人の男(オジサンとかオヤジと呼ばれる)を振り回す。大人が子供に振り回される理由はは多々あるが、ひとつにインターネット・コミュニケーションの特徴、つまり「性別や年令の差、大人と子供の違いを仕切る壁を必要としないコミュニケーションを実現するメディア」に原因がある。この電子ネット上のコミュニケーショで、大人の男性は、欲望の赴くままに、自分で勝手に妄想を膨らませて相手をイメージする。対面して少女の顔を見ればその幼さとあどけなさに大人と子供の差を感じるはずなのに、自分の作ったイメージにはまりこむ。だから「あれ、本当に中学生なんだ」というセリフを吐いてしまうこともある。
信濃毎日新聞2003年1月13日(月曜日)
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