信濃毎日新聞に連載 第4回 ケータイの落とし穴−いま子どもたちの世界は
| 信濃毎日新聞毎週月曜日に連載 第4回 ケータイの落とし穴−いま子どもたちの世界は 「持たせて安心の危険性」 |
|
| 下田 博次 | |
| 2001年に「日本の高校生の携帯電話所有率は82〜95パーセント」(PTA団体などの調査)というデータが出たとき、米国のメディア研究者から「なぜ日本の親はウエブ・フオン(インターネット接続型携帯電話)を競って子供に買い与えるのか?アメリカでは十代の子に使わせていない。子供には必要がないと思うが」と質問された。 私は「子供たちが欲しがるからだ」としか言いようがなかった。現にPTA団体などアンケート調査では「子供にせがまれたので買い与えた」という理由が88%を占めている。次いで多いのが「塾や部活動等、子供の送り迎えや連絡に便利」「居場所がわかり、持たせると安心」と続く。日本では1999年から、このような理由で高校生ばかりか中学生や小学生にまで携帯電話が急速に普及しているのだ。 私がそう説明しても、米国の研究者は納得しなかった。「それは、必要も無いものを買い与える理由にはならないのではないのか。携帯電話はインターネット端末だから、良く考えて与えなければいけないのではないか」というのだ。現実にも子供の携帯利用に関系した事件が次々起きていて、今ではもう誰も驚かないといつて過言ではない状態になってしまった。こうして原稿を書いている最中(1月19日)にも、地元の警察(近隣の大間々署)が、高校1年の15才の少女に暴行し強制猥褻行為におよんだとして、36才の会社員を逮捕するという事件が起きた。2人は携帯電話の出合い系サイトで知り合い、メールのやりとりを続けた後、その日はじめて会ってドライブしたというのである。 子供たちの携帯からの出会い系サイト利用は、売春から強姦(ごうかん)、殺人など各種の重い犯罪まで誘発しているのだ。そのような現実の事件を直視していたのなら「持たせて安心」とばかり言っていられないはずだ。 「子供の居場所がすぐにわかる。」「いつでも連絡がとれる」など持たせて安心という理由にしても、安易な考えと疑ってみる必要がある。私は学校や警察の非行対策関係者からこんな話も聞いている。 「携帯電話は固定電話と違う。動き回ることができる。だから、親が居場所を聞いても、子供がそこにいるとは限らない。」「学校をサボったりしている子供の家に行き話を聞くと、毎日家を出て学校に行っているという。これまでの勘で、非行グループの溜(た)まり場に行ってみるとそこにはいない。実際には、遥か遠い学校区のメル友の家にいて驚くことがある。短期家出のケースも含め、子供達の繋がりは掴めなくなっている」 もっとも最近の各種調査では、少数だが現実の事件を軽くみなすことなく子供に危険性を教える親もいる。 前回紹介したティーンズ・エクスプレスという放送番組に関わっている女子高生の一人もこんなことを話してくれた。 「父に、買ってほしいと言ったら、携帯にからむ事件のことをあれこれ教えられ、その上で必要性について説明しろと言われた。それであきらめた」 それを聞いていた女の子がポツリと「うちの親はそんなことはまったく何も言わない。私のこと心配してないのかな」と言った。 |
|
| 信濃毎日新聞2003年1月27日(月曜日) | |
| 掲載記事・写真の無断転載を禁じます | |
| 意見、感想等、お寄せください。netizen@abeam.ocn.ne.jp または送信先:Fax 027-260-5035 |
![]() |
![]() |
![]() |