信濃毎日新聞に連載 第5回 ケータイの落とし穴−いま子どもたちの世界は

信濃毎日新聞毎週月曜日に連載
第5回 ケータイの落とし穴−いま子どもたちの世界は

「電話ではなくおもちゃ」メール多用ー料金高額に
下田 博次    
 
 
 今や日本の10代の子供、とりわけ高校生のほとんどが携帯電話を所有している。持っていない子を探すのが難しいほどだ。ちなみに昨年9月に前橋市内の高校生を中心とした私の研究室の調査では、女子高生の85%、男子高生の92%が携帯を持っていた。今や中学生でも4割ちかくが所有していると思われる。
 このように、親達が競って携帯を買い与える理由としては「子供にせがまれるから」がトップに挙げられるが、このことについては前回に説明した。では子供たちは、親にどんなせがみ方をするのか。
 「買って,買って」という駄々子のようなせがみ方は別として、最も多いのが「皆が持っているので携帯を持たないと友達付き合いができない。」あるいは「自分だけ持っていないと変人扱いされていじめられる」というものである。親はこの一種脅迫じみた懇願に弱い。
 しかし本当に連絡だけに使う便利なコミュニケーション・メディアかといえば決してそんなことではすまない。確かに「今日は部活で遅くなる」等と連絡にも使えるが、それだけならば月に5000円も1万円もの使用料がかかるはずはない。全述の私の研究室では、使用料金が月に5000円から1万円の範囲というのが58パーセントと一番多かった。次いで月間1万から2万円が25パーセントで、わずか1パーセントだが2万円以上という報告もあった。前橋以外で、私の知る限りでは月額10万円以上炉いう例もあり、高額な支払いのためのアルバイト、援交も珍しくない。利用金額がこのように増える理由は、インターネット端末としての使い方が原因である。

 親の世代の多くは、携帯電話を歩く公衆電話とみなしているが、あれこれせがんだ末に携帯を手に入れた子供たちは、声による連絡よりもEメールによる連絡やメールのおしゃべり(チャット)に使っている。つまり携帯を電話機とはみなしていないのだ。
 Eメールでのコミュニケーションは時間に制約されないことや料金が安いことから、子供たちは通話よりもメールを主に利用する。私たちの調査では、一日300通もメールしている生徒もいた。しかし、あまりに頻繁にメールを利用しすぎてパケット通信料金が急激にふくらみ過度な料金支払いにつながることになる。さらに有料サイトの利用も支払い料金の高額化につながる。そればかりかアダルト系サイトがらみでトラブルも増えていることはこれまでも説明したとおりである。ちなみに有料サイトに関しては、着信メロディや待ち受け画像のダウンロードなども流行となり支払い料金高額化を招いている。子供たちは、数あるメロディや画像の中から自分 の好みに合ったものを選びダウンロードすることで、自分のセンスや個性を表現しているようだ。また、ゲームや占いをダウンロードする子供も多い。ゲームについては男子生徒のほうが利用が多く、そのため使用料金を男女で比較すると女子高生より男子生徒の方が多いという結果にもなる。
 このようにみてくると、子供たちにとって携帯電話とは、ようするに毎月のお小使いをはるかに越える高価な玩具なのだ。実際に、彼らはそのことを自覚していて「携帯は勉強に役立つメディアではない。パソコンからのインターネット利用とは違う」と言い切る。しかし教育的メディアでない携帯電話がいろいろな口実をつけて学校に持ち込まれているし、それが教育現場の頭痛の」種になっている。そのことについては、次回に。
 (群馬県での高校生を対象にした携帯電話利用実態調査のデータは、ねちずん村Teens ExpressのTeens Express携帯アンケートをご覧下さい) 
信濃毎日新聞2003年2月3日(月曜日)
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