信濃毎日新聞に連載 第15回 ケータイの落とし穴−いま子どもたちの世界は

信濃毎日新聞毎週月曜日に連載
第15回 ケータイの落とし穴−いま子どもたちの世界は

犯罪に直結する有害情報
下田 博次    
 
見分ける力 育てる必要
 前回,私は「子供たちの携帯電話利用を考えるとき、あの小さな画面に現れる情報の良し悪しについて、もっと注意を払うべきだ」と述べた。理由は携帯電話が,今やインターネット端末装置に変身しているからである。
 既に述べたように、米国では子供のインターネット利用にあたり、過去10年以上にわたって情報の有害性あるいは有害情報の規定について、国民的な議論が行われてきた。そうしたなかで、インターネットの情報環境をホワイト(有益な情報)、ブラック(有害情報)と、それ以外のグレー(無害あるいは有害とは簡単に規定できない情報環境)に色分けする考え等も生まれてきた。
 そして親や大人は、人格形成や心身の成長に害のある有害情報に子供たちを近つけないよう努力したり、子供たちが情報の有害性を見分ける力を持てるようサポートしはじめた。この場合、有害な情報とはどのようなものを言うのか。私の見るところ、インターネットで有害情報と合意されるのは犯罪に直結する種類の情報である。
 例えば麻薬や青酸カリなど劇薬、爆発物、銃砲などの製造、販売に関する情報から未成年者の性、わいせつ情報の売買や詐欺,悪徳商法被害をもたらす種類の情報、殺人、暴行、窃盗の計画および教唆に関する情報・・・。さらにはプライバシーの侵害から脅迫、誹謗中傷にいたる個人攻撃情報の発信などがそれである。
 これらインターネットの有害情報環境のレベルは、子供の利用を前提にすると、テレビ,映画などマスメディアの有害番組,猥褻作品とは比べようもないほど悪質と言っていい。テレビは、爆弾の作り方など放送しないし、見る人が吐き気をもよおすほどグロテスクな映像も流さない。たとえ悪質番組といっても、犯罪に人を直接引き込むような有害情報も発信しない。またレイプ実行仲間や自殺仲間、窃盗グループ作りを呼びかける番組など制作したりはしない。しかしインターネットならそれが簡単にできる。つまり悪意を持つ人間同士を簡単に探し、つなげることができるメディアなのだ。しかもパソコン画面に出てくる、そうした害のある情報は、テレビほど簡単に締め出せない。欧米のメディア教育では,早くから、そのことが問題にされてきた。
 直接に人を犯罪に関係させる情報ばかりではない。アングラ情報と呼ばれる破廉恥、ナンセンス、イタズラ、デマなど他人を不快にさせる目的のサイトもネットには多い。私の大学で、高校生のときからネット利用をしてきたという学生が、こんなことを言った。「インターネットではご禁制の品物の売り買いもしているし、本屋におけない猥褻画像もある。一体大人はどう考えているのかわからなくなった」「高校のとき自分の部屋でネットサーフしていて偶然に自殺サイトにぶつかった。思わず引き込まれ、親にも相談できず恐ろしかった」
 日本のインターネット利用環境を考えるとき、問題はそうした子供達の疑問に大人が十分答えていないことである。とりわけインターネットからの犯罪誘発情報が,ゲートウエーを通過して子供達が常時身につけている携帯電話の極小画面に直接入ってくる。そのことに危機感をもたなかったことである。
信濃毎日新聞2003年5月12日(月曜日)
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