信濃毎日新聞に連載 第20回 ケータイの落とし穴−いま子どもたちの世界は

信濃毎日新聞毎週月曜日に連載
第20回 ケータイの落とし穴−いま子どもたちの世界は

良いユーザーになるための情報
下田 博次    
 
高校生では遅すぎる?
 ねちずん村というホームページを群馬県からの支援とボランティアの皆さんの協力で発信して、今年でまる二年が経過した。この間さまざまな反応もあった。
 たいていは親や教師からの書き込みだが、一年前に女子中学生から「携帯電話が問題になっているということばわかりますが、あまり騒ぐと日本の成長産業である携帯電話ビジネスに悪い影響が出ないか心配だという人もいますが、どう思いますか」という質問が来たことがあった。この質問に私は、およそ次のように答えた。
 「現実に起きて増えている問題から目をそむけず、なんとか解決しようと呼びかける論調は、マスコミでも少なく、携帯の流行ばかりを伝える情報の方が圧倒的に多い。まずこのことが気になりませんか」
 「それに携帯業界も、目先の商売ばかり考えていると結局は後でつけがまわってきて損をする。特に、これから本格的に海外でiモードのような携帯電話を売っていこうとするならば、日本の企業も青少年への悪影響対策を全力で行っていることが理解されなければ欧米では受け入れられないでしょう。成長産業であればあるほど、本当に良心的なビジネスをしなければいけないはずです」
 「なによりも、私は一人の大人として日本の子供たちが今体験している問題をほおっておけない。あなたたちに、この社会を支えてもらわなければならないので、期待もするし心配もするのです」
 断っておくが、この中学生は、ねちずん村の携帯利用問題への取り組みに反対するために、このようなメールを送ってきたのではない。私は、一度だけだが、講演のあとで「あなたはうちの商売を邪魔するのか」と業者に噛(か)み付かれたことがあったが、彼女は、そのような観点から「携帯ビジネスへの影響」を懸念しているわけではなかった。
 しかし、中学生のこの質問には、明らかに大人の価値観が反映していたことも事実である。 この場合、仮に大人が中学生に、まずビジネス的視点を与えたとすれば、それは大人の振る舞いとはいえないと思う。このような視点から携帯問題を眺めさせることがいけないと言っているわけではないが、今、われわれ大人が子供のためにしなければならないことは、彼らが疑問もなく日常使っている携帯電話というメディアを、ユーザーとしていちど再検討させ、客観視させることではないのか。 実際に高校生たちに話していて感じることは、良いケ一夕イ・ユーザーになるための情報、アドバイスを十分に受け取っていないということだ。注意されるのが嫌な高校生たちは、最初は斜に構えて聞いているが、自分にとつて危険なことや損になること、あるいは他人に嫌がられることには、ちゃんと聞き耳を立ててくれる。
 最近は「高校では遅すぎる。もう注意できない」という声も強くなっているが、そんなことはない。親指の動かし方は、確かに子供たちのほうが勝っているが、常識や社会の仕組みを理解し、メリットの多い使い方をするには大人のお節介が有効なのだ。
 それにしても一年前の中学生からのメールを思い出したのは、最近高校生より中学生に話して欲しいという要望が急速に増えているからである。
 学校でのインターネットやケ一夕イ利用が急速に低年齢化し、それにともない問題も中学で増えているからだろう。しかし私どもが、中学生を相手にケ一夕イ利用の問題を話しかけるには、いくつかのむずかしいハードルもある。
信濃毎日新聞2003年6月23日(月曜日)
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