信濃毎日新聞に連載 第22回 ケータイの落とし穴−いま子どもたちの世界は

信濃毎日新聞毎週月曜日に連載
第22回 ケータイの落とし穴−いま子どもたちの世界は

教育目的の使い方を模索
下田 博次    
 
高校生からアイデアも
 これまでも繚々(るる)述べてきたように、携帯電話は教育的メディアとはとても言えないというのが私の判断である。しかし、いまさら学校に携帯電話を持ち込むな、と言っても無駄かもしれない。正直言えば、それが私の本音である。特に高校では、ただ禁止といって済む段階ではないようだ。それでも中学校には、持ち込ませないほうがいいし、頑張ればまだ間に合うかもしれないと思うが、これも自信がない。
 なにしろ普及のスピードが止まらない。最近の私どもの調査によれば、群馬県の小都市の中学校でも三年生を中心に、半分近くの子供たちが携帯電話を所有しているところまできている。さらにその低年齢化の動きは小学校にまでおよんでいる。
 こうした現状のなかで、高校を中心に、まず学校への持ち込みでルールを作り、かつ保護者向けの啓蒙教育を始める動きが少しずつ出てきた。また一部の高校の教師を中心に携帯電話を教育目的に使えないかという手さぐりも始まった。 例えば社会科や理科の先生が、少しでも勉強に役立ちそうなサイトを見つけると、私のところに知らせてきて意見を聞くようにもなってきた。また携帯の良いところ、悪いところを生徒たち自身に考えさせる授業を試みる教師も出てきた。
 われわれが発信しているねちずん村というホームページに、携帯の悪い使い方や危険な使い方について、「個人的にこのような教材を作りました」と知らせてくる中学教師も出てきた。しかし、この種の授業を学校側は認めていないようだ。
 そうした中で最近では、高校生からの提案やアドバイスの方がおもしろい。例えば彼らは「先生たちには携帯電話で生徒指導やお知らせや相談、カウンセリングなどもしてほしい」というのだ。現実に、私立の高校や大学ではそうしたことが行われ始めているようだ。
 いわば学校側の生徒へのサービスに、携帯というメディアをもっと使えという提案だ。
 前橋市の高校生からは「携帯電話はボランティア活動に使える」という報告も受けている。実際に彼らは群馬県庁前でのチャリティーバザー開催で、学校を超えた仲間作りを携帯電話で行った。うれしい報告だ。
 実は私もボランティア活動での携帯電話利用に注目している。私は、富士山の環境美化に取り組む富士山クラブという環境NPOの副理事長をしている。われわれのNPOでは、ドコモ・、システムズ社と共同で、カメラ付き携帯電話を使った不法投棄監視、通報システムを開発中である。なにしろ富士山の山ろくには大型廃棄物を中心にゴミの不法投棄が絶えないのだ。われわれは大人に交じって中高生らが、環境ボランティア活動や総合学習の一環として、携帯電話を使った環境活動をしてほしいと願っている。
 また私が住む群馬県の赤城山では、希少なチョウの保護活動や里山保全を考えた昆虫観察などに、カメラ付き携帯電話の活用実験を考えている。
 ちなみに、インターネットというメディアは、九〇年代の申ごろから営利・商業目的で使われるまでは、ボランティアや非営利組織の活動に必要なメディアとして発展してきた。
 一方、携帯電話からのインターネット利用は「面白いか、儲(もう)かるか」で子供たちの世界に爆発的に広がってしまったために、さまざまな厄介な現象を生み出した。しかし、これを機にインターネット利用の原点を子供たちも体験、実感できるプログラムを開発すればいいのかもしれない。
信濃毎日新聞2003年7月7日(月曜日)
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